美女ゲ『鏖呪ノ嶼』感想 ~売春島を舞台にした、呪いと人の歪みが描かれる呪術物語~美少女ゲーム感想
CLOCKUP『鏖呪ノ嶼』タイトル画面
瀬戸内海に浮ぶ売春島を舞台にした、呪術を描いた物語。
呪術師である二人の主人公の視点から、島を管理する名家である二ツ栗(ふたつぐり)家の呪いや、島の生い立ちが徐々に明かされていく。
キャッチコピー「地獄に最も近い場所(しま)」の名の通り、地獄の様に呪われた島で人の持つ歪みが描かれる。
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以降、ネタバレ注意!!!
※感想は概ねプレイ時の時系列順です。
誤字や文法間違い、解釈違い等があるかもしれません。
あくまでも個人的な感想なので、寛大な心でよろしくお願いします。
※ネタバレ注意
二ツ栗家の登場人物が多かったので、まず関係性の再把握と整理のために参考までに二ツ栗家の家系図を載せまておきますね✋
ここからは各章別で、個人的に印象に残ったシーンで感じた事をまとめていきます。
【過去編 文鳴】
『槐を抱く、若き日の文鳴の葛藤がよき』
孤児である文鳴をずっと育ててくれた槐に対して、文鳴の男として成長した肉体から発する性欲が彼女に向く。
一緒に長い時間過ごした大切な家族の様な存在に対して雄の本能が、槐を抱き自分の雌にしたいと沸々と願う事に嫌気がさしながらも、その欲望を抑えきれず文鳴は彼女を抱いてしまう。
そして抱いた後、槐は自分に優しい言葉をかけて傍で寄り添ってくれるでもなく、淡々と二人で過ごしたいつもの夜の様に「……もう寝なさい」とだけ言われる。
文鳴は槐と恋人の様な一歩踏み出した関係性になりたかったが、その希望は打ち砕かれ、互いの関係性に変化はなく、ただ文鳴は後悔という感情に支配されるのが良かった(青くて若い性欲に支配された青年の心情描写っていいな……
⇒読了後追記文鳴ENDの最後のCGで、若き日の文鳴と槐が笑い合う様子を見れただけでも幸せだなぁ……
【文鳴編 弐】
『二ツ栗家を変える珠夜の決意』
珠夜が宗孝に軍神島への生贄を島の歓楽街で働く娼婦から調達するのではなく、島の外から調達し、生贄を増やすこと提案。
その案の見返りとして宗孝に珠夜は抱かれる。
珠夜が二ツ栗家の悪習を変えていこうと決意して宗孝に協力を求めるも、その見返りとして犯される様が、島の二ツ栗家が腐っている事を如実に感じて村因習モノとして良いシーンだなって思った(宗孝が性悪に満ちた典型的なオジサンって感じ
あと珠夜が最後まで犯されるのは嫌だって意思を貫いているのも、家を変えるという決意の固さを感じれて良かった(いつか幸せに、不二彦と結ばれる事はあるんだろうか……
『”歪み”が呪術者としての素質になる』
自分自身を知ることが自身の”歪み”を認識することに繋がる。
刑部が不二彦に投げた以下の言葉が呪術者として”歪み”を得る方法だと感じた。
刑部「足りないものは、歪みを歪みとして認識する自覚に尽きる。その厄介な自己欺瞞を脱ぎすれてられれば、呪術の門を叩くことも可能になるだろう」
⇒読了後追記主人公の二人は以下のような歪みがあったから、呪術師足り得た。・文鳴は他人なんてどうでもよく、槐と自分だけが大切という歪み・吐月は法の正義は自分の正義(文鳴を罰する)足り得ないという歪み
【吐月編 参】
『人間大好き、最狂オジサン』
この人間大好きで狂った刑部が色々の悪の原因だろ……w
足搔く人間が大好きだから、自らあらゆる人間に試練を与え続ける行動原理に理解出来た
刑部「人間はだれしも思うようには生きられない。それは今までに関わってきた……否まだ会ったことのない者すら含めて、あらゆる他人との因縁の縁が、思わぬ形で絡んでくるからだ」「縛りやしがらみと言い換えてもいいだろう。俺は、そうしたままならなさで雁字搦めになった人間が生き足掻く様が、たまらなく好きでなあ。自分自身すら例外でなくな」
あとこれだけ歪んだ性格で、刑部自身もそれを自覚しているからこそ呪術において優れた人間なんだろうな……
⇒読了後追記刑部は幼い頃、人里から隔離された場所で肉親と殺し合いながら最後まで生き残った。
刑部の父親が生き残った刑部を抱きしめようとする様を、攻撃と捉えた刑部は実の父親を殺す。
刑部を抱きしめようとしていた父親の表情の意味を理解できなかったが、それが忘れられない彼は人と交流し始め地獄が始まっていった(その最悪の例が偲との家族ごっこですね…
【文鳴編 参】
『文鳴の愛』
文鳴が若宮神社で夜遅くに吐月と会った時のシーン。
文鳴がこの世で唯一大切な存在が、槐であることを示す以下の心情描写がよき
そうとも。自分以外はすべて敵か、いずれ敵となりうるものでしかない――そんな自分にも、己以外に大切に想えた存在がかつては確かにあったはずだ。だがそれは、もはや永遠に失われてしまった。遠い少年時代に抱いた慕情と共に。ならば文鳴にとってこの世界とは、すべてが無価値な形骸だ。敵か味方かで粗雑に両断したとて、取りこぼし惜しむべきものなど何も残ってはいない。
槐を失った文鳴が世界の事などどうでもよく、復讐のためだけに生きている事がしみじみと伝わってきて良い。
十代の頃に芽生えた感情を大切にして、40過ぎになるまでその情熱を燃やし続けるって正しく愛だと思う。
⇒読了後追記
文鳴ENDの最後まで彼は自分以外はすべて敵の信念の元で行動していて、ぶれない文鳴がカッコよかった。
あと”ぶれない≒わがまま”って感じで、槐と別れた時の子供らしい感情を残しているのでは?とも感じ取れてオジサンなのに、子供らしさを残してて、そこもまた文鳴ってキャラクターの深みを出してると思う
【過去編 吐月 弐】
『吐月の”正義”』
自分が敵だと思うものを絶対的な悪と断定して、その悪を撲滅するための行いを”正義”だと思いこむ。
吐月が刑事として文鳴を逮捕しようとした行動や、逮捕が難しくなったから殺そうとすることは吐月の主観では”正義”だった。
以下の吐月の心理描写で、呪術師の素養となる彼の抱える大きな矛盾が描かれていたと感じた。
法の正義を守るために、法で裁けぬ男を裁く。その巨大な矛盾を解決するために、吐月はいつしか最も根本的な手段――この手で文鳴の処刑を行うことに思い至った
【文鳴編 伍】
『文鳴が珠夜を犯した理由』
槐は自分が犯されてでも金をつくり、文鳴を守っていた。
それを忘れられず度々その記憶を思い出し不快になる文鳴だから、珠夜が叔父の宗孝に犯されてでも二ツ栗家を守ろうとする姿を見て苛立ちを覚える。
その苛立ちは腐った因習に囚われた二ツ栗家を、珠夜が犯される事で守ろうとしている姿が槐と重なり、文鳴は槐が犯され守られている彼自身の存在が二ツ栗家と同列に感じた。
だから二ツ栗家と自分が同列にしたくないからこそ珠夜を犯し、彼女に二ツ栗家は犯されてでも守る価値の無いものだと珠夜の肉体に理解させたかった。
その結果、文鳴は乱暴に珠夜を犯した。
文鳴は二ツ栗に所属しながらも、腹の底では自分自身以外(二ツ栗)は全て敵だという彼の矛盾が描かれていて良いシーンだな。
【文鳴END】
『文鳴が珠夜と交わった理由は?』
珠夜が不二彦のところに行かなかったのは自分の弱さをさらけ出し、軍神へ身を捧げる覚悟が鈍る事を防ぐため。
文鳴が珠夜を抱くのは彼女の崇高な自己犠牲の姿を見て、同じく自分に尽くしてくれた槐を思い出し、一夜だけでも性交で現世の辛さを紛らわせてやりたいと思ったから?(正直文鳴の気持ちがちょっと分からない……
⇒読了後追記ただ最後のシズとの対決シーンで吐月が文鳴に「お前の戦う理由は珠夜のためか?」と問われ、「そうじゃない」って答えたところが良かった。文鳴にとって珠夜が大切なものでないという、彼のブレない所に安心した。
『文鳴の行動原理』
文鳴の行動原理はただ自分と槐のために動いている。
だからシズと対峙した際に、ネットワークに呪いを接続して全世界にばら撒いた。
槐と自分を負の運命に転がり込ませた二ツ栗の呪いであるシズに対して、個人的な因縁を解消すべく、全世界を巻き込む選択を平気で選ぶところが最高に文鳴が文鳴していて良かった。
文鳴が戦う理由は珠夜とかの身近な女ではなく、己と槐のためだけってのが一貫していて、かっこいいね。
【吐月END】
『吐月の偲への好意』
偲とは申仏島で短い時間だけど一緒に過ごしてきた中で、互いに他愛ない事を言い合える居心地の悪くない関係になった。
鬼化しかけた偲を元に戻すためという利害関係の一致により再び交わる事も、吐月がどこか言い訳をつけてでも偲の事を近くで感じたいという彼の思いを感じた。
『吐月の選んだ道』
ここまで流される様に生きてきた吐月だけど、彼自身が自然と接し心地良い偲という存在に出会い、一緒に戦い、肉体関係を結び、鬼になった彼女を屠り、鬼神として彼女の存在を文字通り背中に背負う。
この様に大切に想った女性を再度失ってしまった吐月は、”愛した人を守れない”という”歪み”を背中に背負いながら呪術師として裏社会で生き続けているのがカッコイイって思った。
『カノの最後とその未来』
カノはシズに身を捧げる。そのことで力を増したシズの怨念が軍神を退ける事で、カノは吐月を救う手助けをする。
そして二ツ栗家を全滅させたシズが成仏した後、カノが狼の霊として吐月に付いて回っているという未来が示されて、心底良かったって思えた。
軍神に捧げられてからの長い間地獄を味わったのに本来の精神を取り戻し、愛する吐月を救うために命を捧げて、死後も吐月の傍を離れないのが健気でとてもいい子だなあ…(切実
【キャラ別感想】
ここからはキャラ別に感想を述べていきます。
『文鳴 啾蔵』
僕は吐月よりも文鳴が好きですね。
特に文鳴の生き方にブレがない様が良い。
彼の行動基準は自分のため、槐の復讐のためだけ。顔を知らない他人がどうなろうとも気にも留めないブレない所が好き。
それとこの生き方から槐と過ごした大切な記憶が根底にある事を、読み手として常に感じるから真っ直ぐな彼にとても好感を持った。
あと槐とは実の親子だから、幼き日の文鳴の恋心は一生叶わない所もよき(悲恋すき
『吐月 完』
ビジュアルは吐月より好きかも。
元警察官だけあって、肩幅があってガッチリしている所が大人の男の色気って感じが良い。
あと元警察官って設定が物語の展開に上手く生かされていて良い。
完全犯罪である文鳴の呪殺を立証出来ず、警察官なのに直接的に銃で殺そうとする所で”歪み”を背負う。
そしてその”歪み”が吐月を忌み嫌った呪術師の道に引きずり込んでいる所が好き。
あと何だかんだ周囲に居る人を助けたいという優しさ(善人っぽさ)も良かった。
『苦松 刑部』
人間大好き、最狂オジサン。
序盤から只者でない空気を出していたけど、実際マジでヤバい奴だった(登場人物ほとんどに因縁あるとか恐ろしいわ)
あと刑部の他人からに向けられる感情(好意・殺意・敬意・etc...)は全て愛だという考え方は間違いではないと思う(好きの反対は無関心って言うし)し、刑部の生き様に合っていたと思う。
偲に殺してやるって言われるシーンで、にちゃぁ…って笑っている刑部は凄く嬉しそうで大好きです(笑)
あと声優さんの演技も抜群にマッチしていたと思います(淡々とした話し方が不気味で良い
『ニツ栗 珠夜』
ヒロインの中では一番好き。
弱々お嬢様かと思いきや、覚悟を決めた後の意志の強さに惹かれました。
家の呪いに立ち向かう姿が凛々しくてカッコ良かった。
あと文鳴ENDで軍神の地獄を味わいつつも、無事に生還して家をまとめているのが精神的にタフで尊敬する(何であの地獄で精神が保たれるのだろう…すげえや
『火蛾 偲』
武闘派ヒロイン。
刑部に鬼を背負わされるも、母親の復讐ため自分で生き抜く力をつけて、吐月の横に並んで戦う姿がかっこよくて良かった。
あと吐月とは常に対等で言い争いしたりする所も良かった。
『カノ』
個人的にビジュアルは一番好き(褐色少女は好みなんだ…)
ただ生い立ちや、軍神絡みのシーンだったりで残酷な扱いを受けることが多くて、胸が傷んだ……
でも吐月ENDの最後で狼の霊となって、大好きな吐月の傍に寄り添っていて幸せそうなので、良かったです(穏やかに過ごしてほしいな
あとベッドで添い寝するCG凄く好き、頭なでなでしたい。
『塔婆 不二彦』
不二彦と珠夜のお話はどこですか???
珠夜と恋仲になるENDとか見てみたかったな、どのENDでも彼が報われなさ過ぎる…
まあ不二彦が珠夜の事を恋愛として一切見ていない、従者としての信念が現れるシーンも(吐月ENDでの刑部との闘い)素晴らしかったけど、ちょっとくらい不二彦にもご褒美があっても良いと思うのです、、、
【さいごに】
ここからは雑多に感想を書いていくよ。
肉体的に残酷なシーンに少し戸惑いながらも、呪術バトルモノ・村因習モノとして楽しむ事が出来ました!!万人には勧められない気がしますがw
二人の主人公それぞれの視点で物語が進行する所が良かった。
互いに何を信念に持って行動しているだったり、吐月が○○をしていた時の文鳴の行動が分かって、物語に深みが出ていたと思います。
あと随時過去編を挟むのも、謎の開示のタイミングだったり量がちょうど良かったと思う。
それと呪術(仏教・神道等)に関してはまるで知識はありませんが、純粋なバトルものとして楽しむ事が出来ましたね。
やっぱり魔法でも何でも詠唱ってカッコいいよなと。二人の詠唱が被る演出も最高に好き。
あと文鳴ENDで、今まで対立していた吐月と文鳴が協力してシズに挑む所とか最高に燃えたわ(そういえばこのゲームで萌える事ほとんど無かったな…燃えてばっかりだw
さいごに、
初のCLOCKUP作品でしたが、グロとかに完全に振っているゲームじゃなければ他作品もプレイしたいと思いましたね。
今のところ気になってるのは『Erewhon』かな、村因習モノっぽいし
「メモ:鏖呪ノ嶼を他人に薦めるときの注意点」
- えちちシーンは基本的にオジサンによる凌辱
- きつめのグロシーンは2シーン
- 獣犯、触手犯、人体切断、人体溶解などの描写あり
- 主人公達も平気で色んな女を抱く